私は認知症だった?

入居者の先輩が長年通っているリハビリの評判を聞いて私も頓に弱ってきた足を何とかしてもらおうとタクシーを呼んでいそいそと出掛けました。此処は足場が悪いので病院から送迎バスを出してくれていますが、利用する前に車への昇降の能力テストがあります。…

憧れの駄菓子

5歳から小学校5年まで暮らしていた東京の下町はそこら中に駄菓子屋がありました。子供達はおやつの時間になると親に貰った何枚かの1銭銅貨を握り絞めて駄菓子屋に走り、当てもんを引いたり、駄菓子を物色して楽しんでいました。娘時代に行儀見習に長いこと蜂…

初めてのお勉強

ロビーの自販機の水に H2O と書いてあるのを見つけ学生時代に分子記号を覚えるのに苦労したな。と思い出に耽っていると唐突に記憶の底から浮かび上がった住所がありました。 東京市蒲田区御園町335 かれこれ90年前に住んでいた町です。前任地は岩国市の田園…

体幹の反乱

95歳を過ぎても脳味噌は余り衰えていないつもりで色々指令を出しますが受ける、部下の体幹がもう駄目と反乱を起こしたらしく、「前に進め!!}と言っても足を上げようともしない。。外出から帰ってドアの鍵穴を覗き込むとそのまま前につんのめってドアー…

若しかして私はスーパーエイジャー

愛の里のお世話になって足掛け4年、死ぬことすら忘れる程の多忙な日々を過ごし間もなく く95歳を迎えます。三食昼寝付のつもりで決めた当所、他の多くの人の様に食事以外部屋でごろごろしていても何の支障もありませんが、人一倍好奇心<野次馬根性>の強い…

奇遇

薬が切れたので久し振りで病院を訪れた時の話です。割合混んでいるので大分時間が掛かりそうだとフト隣を見ると80過ぎに見えるお婆さんの膝に置いたバッグからボールペンの頭が覘いている。メモ道具を持ち歩く位の人なら話し相手として不足ないだろうと<暑…

恐怖のDNA

私の名付け親である大伯父は親族きってのインテリで一族一の横紙破り。未だに一族の語り草になっている逸話があります。頃は明治の終わりか大正の初めの頃、酒に酔った大伯父が所も有ろうに御堂筋で立ちションをやらかし忽ち巡査に捕まった。オイ、コラ、の…

名前の由来

XX豊野 姓だけでも20画もある下の名前がこれ。小学校低学年の頃この字画の多い姓名に どんなに親を恨んだことでしょう。私も小山ハルさんだの田中正子さんの様に簡単な名前なら もっとゆっくっり検算もでき若しかしたら100点が貰えたかも知れないのにと…

花まつり

4月に入ると間も無く食堂の入り口に <4月8日は花祭りの特別メニューです>の掲示。へぇー、今でも花まつりのお祝いをする所があるんだ。と思いは80余年前の花まつりに一足飛び。その頃私は東京も郡部に近い蒲田に住んでいました。 例年花まつりの日にはあち…

思い付くまま

以前にも書いたように転勤族の娘に生まれた宿命と諦め、あこがれ続けたお雛様。結婚もしなかったので初孫にかこつけて買う事も出来ないまま90を過ぎてご厄介になった愛の里の初めて迎えた雛祭り。館内のあちこちに溢れる雛飾りに目を見張り、用も無いのに…

しゃべりたがり

アメリカの友人宅にビザの期限一杯三ヶ月滞在する事4〜5回。友人は日系二世で言葉に不自由は無いが』訪れる友は殆どは白人。遠来の客人をもてなそうと、色々話しかけるが、殆ど通じない。それでも、えらいもので4回目の訪米辺りから話題だけは判るようにな…

思い付くまま

某日、リハビリを受けに行く為バス停で待っていました。歳の所為か(93歳)立っているのが段々苦になりはじめたので、早目に出かけて誰も居ないベンチに腰を掛け待っていました。その内近くの学校が引けたと見えて小学校低学年の子供達が1クラス分位い集…

思い付くまま

継続的に通っているリハビリの為暑い日盛りに乗ったバスが満杯。運転席の後で杖を片手に金棒にしがみ付いて立って居ました。一番前の席の左に荷物を抱えた中年の女性、右に若い男性が座って居ました。暫くすると女性の方が「どうぞ」と席を譲ろうとしました…

讃婆

馴れない集団生活にオタオタしている内に歳月は容赦なく流れ三度目のお盆が巡ってきまし た。神道の家に育った私は仏事に暗く仏前で拍手を打ちそうになったり冷汗の連続でしたがさすがに三回目ともなるとお盆の行事も余裕を持って参加出来る様になりました。…

思い付くまま

「ほら、又来たよ」未だ日の高い内に夕食を済ませロビーのソファーで寛いでいたお仲間が一斉に視線を向けた先に小太りの若者がにこにこしながら頭を下げて居ました。ここの入居者のお孫さんで、長年家族と賑やかに暮していたのに急に1人になっては心細いだ…

異邦人

最近5−6年もご無沙汰だった友人達から頻繁に見舞い状が届くようになりました。と言うのも現在私の暮しているのは熊本県から大分県に続く大活断層に程近い別府市だからでしょう。 先月の第一波の折には流石の熟睡魔の私も飛び起きましたが、風の吹く頻度並み…

新しき門出

先日開催された入居者食事懇談会の折の余談に「皆さんに少しでも季節を味わって頂こうと土筆を取ってきたのですが、はかま除りが大変で厨房だけでは手が足りず私も家に持ち帰って夜なべに家族を動員してる」とのことに、思わず「暇を持て余している入居者も…

新しき門出

1学年に二度も転校する様な典型的な転勤族の娘に生まれた私は<引越しの荷物になるから>と言う理由で生涯お雛様を持つ事が出来ませんでした。 そんな娘が哀れと思った父が小学校3年の時ボーナスをはたいて、少し名のある画家の 立ち雛 の掛け軸を買ってくれ…

讃婆

此処を終の棲家と決めてから早いもので二度目のお正月が93歳の私の上を静かに流れて行きまし た。初めて迎えた新年は、此処の暮らしに馴染むのが精一杯でお餅つきと、初詣で位しか記憶に 残っていませんが、気の合う話し相手も何人か出来、顔も覚えて貰える…

新しき門出

部屋に引き取って1人で過ごすには長い時間を持て余す夕食後何となくロビーに集まった婆4人。平均年齢80ウン歳。大した話題がある訳でも無く、若かりし頃体験した戦争中の話しに落ち着きました。先の戦争で死んだ人達の中にはノーベル賞が貰える人やゴッホ…

一番古い記憶

三歳半年下の弟がハンモックに寝かされて揺れていたのでもう87〜8年の昔になりますだろうか?其の頃私達一家は岩国の まりふ?に住んでいました。錦帯橋のある錦川に近い、多分農家の離れでも借りて居たんだと思います。家を一歩出れば無花果の茂みと畑だけ…

新しき門出

雨続きで好きな散歩にも出られずPCも目が霞むで、たまには冷蔵庫の掃除でもするかと、中身を引っ張り出すと、覚えの無い小さな容器に入った味噌が。蓋を取るとぷーんと良い匂い。 何ヶ月も前にお隣さんから頂いた梅味噌。恐る恐るなめて見ると、甘酸っぱい味…

新しき門出

夕食が始まったばかりの頃施設長さんが笑顔の爽やかな若い女の子を 連れて入ってきました。紹介に曰く[早稲田大学文学部1年の学生さんで 自転車で日本一周中。北海道から下って来て、これから九州を経て沖縄 に向かわれるとの事なのでお連れしました」 客人…

新しき門出

某日、ひつこい腰の鈍痛に耐えかねて整形外科医院を訪れた時のお話。 骨粗しょう症が原因との事で改善の為4週間に一度注射を受ける事になり処置室に入ると大嫌いな静脈注射。私の血管は出にくい上逃げるとかで、昔、他の病院で星状神経節のブロックを受けに…

新しき門出

何時もどおり目覚めて起き上がろうとすると、脇から腰にかけて激痛が。 身に覚えは無いがギックリ腰の再発かと、湿布を貼ったり薬を塗ったり、 一向に軽減しないまま夕食の時間を迎えました。心配したスタッフ が部屋に食事を運んでくると言うのを断ると何と…

新しき門出

起き抜けに廊下に出るとぷーんと懐かしい匂い。何事ならんと匂いの元をたどって1階まで降りて行くと玄関前の広場で餅つきの準備中。文理大の学生とおぼしき若い男が7〜8人餅つきの力水ならぬ力飯に、厨房からの差し入れをぱくついています。その内もち米が蒸…

新しき門出

年の瀬も押し詰まると餅つきだ、門飾りだ、御節料理だ、とスタッフも大忙しになるので1週間早いクリスマスパーテーをすることになりました。期日が発表されると入居者一同、パーテーに花を添えるべく練習に取り掛かりました。と言っても超の付く高齢者揃い。…

運動会

新しき門出

1階のエレベーターの横に賑々しいポスター。大運動会 の予告です。スポーツ大好き人間の私が見逃す筈がありません。早速フロントに飛んで行って、「運動会があるんですってね。走るのに杖を使っても良いんですか?」まさか!と笑われましたけど、こちらは興…