憧れの駄菓子

5歳から小学校5年まで暮らしていた東京の下町はそこら中に駄菓子屋がありました。子供達はおやつの時間になると親に貰った何枚かの1銭銅貨を握り絞めて駄菓子屋に走り、当てもんを引いたり、駄菓子を物色して楽しんでいました。娘時代に行儀見習に長いこと蜂須賀侯爵家に仕えていた母はとても行儀にうるさく戸外の立ち食いすら御法度。買い食いなんて夢のまた夢。仲の良い友達が時折分けてくれる のし烏賊やニッキ棒がどんなにおいしかったか。父が横浜から買って帰る口に入れたら味わう間も無く胃に滑り落ちるようなシュークリームよりどれだけ美味しかったか。今95歳の私は愛の里で気楽な独り暮らしをしています。喧し屋の母も既に亡く1銭銅貨にも不自由のない境遇なので好きなだけ駄菓子を買い漁っています。