5000ドルで買った指揮権 

今回は夏休みの最中でもあり色々催しごとに接する機会に恵まれました。某日海岸近くの公園に仮設ステージを設けてコンサートが開かれました。私の友人がチェロの主席奏者を勤めている交響楽団の主宰で。砂浜に続く芝生の上に銘銘が持ち込んだキャンバスの椅子に座り、子供達は海辺で水と戯れたり、芝生の上を転げまわったり、おもちゃ箱をひっくり返したような騒ぎ。団員達もGパンにTシャツと、くだけたスタイルでポピュラーな曲がひとしきり演奏されて、休憩。会場の片側にはずらりと屋台。コーラ、アイスクリーム、ポプコーン、ポテトチップ、如何にもこれぞアメリカの感じ。団員達もそれぞれの家族と共に楽しいひと時です。さて次が開演されると司会者らしい男性が何やら喋り終えると拍手と共に登場したのは前の指揮者と違って聊かメタポタイプのビジネスマン風のおじさん。馴れた手つきで譜面台を叩いて団員の注意を集中させると指揮棒をさっと一振り。アレ?一寸変! と思う間もなく勇壮な <双頭の鷲の旗のもとに> のマーチが始まりました。素人の私が見ても団員は手馴れた曲を何時もどおり演奏し指揮者はそれにあわせて棒を振っているだけとしか見えませんでした。でも大喝采の内に終演を迎えました。   後で聞いた説明によるとあのオジサンは<双頭の鷲の旗のもとに>の指揮権をオークションで5000ドルで落札したのだそうです。 なんで???そもそもこのオーケストラはシーズンごとの定期演奏会のチケット収入と寄付だけで成り立っているので今回もその収入源の一環。過去に一万ドルで落札されたこともあるとか。再々の訪米でアメリカ人が寄付に特別の関心をもっていることには気付いていましたが、この大人数のオーケストラまでが寄付でささえられているとは。経営難で古い楽団が次々消えて行く我が国との意識の違いを思い知らされた一日でした。