2010-07-01から1ヶ月間の記事一覧

片鬢、片眉毛

母方の祖母は万延元年一月生まれ。末っ子である母を気遣ってか四六時中家に来て、私にとっては歴史上の出来事としか思えない様な話をいくつも語ってくれました。これもその内の一つです。≪おばあちゃんの子供の頃はなー大雨で土手が崩れたりすると役人が、大…

祖母の山小屋で逢った鉱夫

昭和30年前半の初秋の頃だったと思います。「祖母山に行かないか」との声が掛かりました。2ヶ月程前、従兄弟に連れられて生まれて初めて遠足の山登りでない本式の登山を始めたばかりなのにたった一度で山の魅力の虜になり寝ても覚めても山、やま、ヤマ、の状…

私の故郷

「おくには?」と聞かれてパット頭に浮かぶのは何年かに一度先祖祭りの為に訪れる北九州でもなければ戦後60余年を過ごした関西でもない。薄絹を張ったように澄み切った青空、藁葺きの屋根に干された真っ赤な唐辛子。それはソウル。今までの長い人生に比べれ…

叱るばかりが能ではない

非常事態が起きた時咄嗟の判断が生死を分けることも有り得ます。例えば子供に「池や川のそばで遊んではいけませんよ」と常日頃厳しく言い聞かせていたとしましょう。 そこは子供親に内緒で友達と連れ立って魚をすくいに行ってその内の一人が川に落ちて溺れか…

気になる日本語

近頃テレビを見る度に気になっている言葉があります。それは あげる 最高の教育を受け数々の難関を突破してきたであろう知識人のアナウンサーでさえ当然のように使っています。我々の世代の慣例からすれば あげる は自分がへり下つた相手に使う言葉として用…

米寿のバックパッカー

小学校〜女学校と同じ学び舎で過ごしたボケ残り3人、何時お迎えが来 るか判らぬ身なればせめて生ある内に楽しかった昔話でもしてあの世と やらでの思い出のよすがにしようと、某日温泉に入りながら富士山が見 られるとのうたい文句に引かれて河口湖で暫くの…

127865958*[北鮮を追われて}あとがき

この手記を書き初めて間もなくふと思い出したのは超記録魔であった父があの命を賭けた脱出時、暗くなるまで隠れていた墓の陰や山の中の民家の暗い灯りのもとで、せっせと鉛筆を走らせていた姿です。 若しかしたらと家中を探し回ったら有りました!!! 32…

{北鮮を追われて}其の十一

此処まで来ればもう安心。返って裏道をこそこそ歩いて不審者と思われて発砲でもされたらと大通りに出たものの時々道端で遊んでいる子供達に≪イルボンサラミ イルボンサラミ≫と囃し立てられながら、顔を隠すように足元ばかりを見詰めて歩いている鼻先にいきな…

北鮮を追われて   其の十

一夜を温かい人の情けにどっぷりと浸かって過ごしたあくる朝救い主の青年に送られて再び昨日の驛に戻りました。昨日と違って見送り人でごったがえしているのを幸いに人込みに紛れて無事車中の人となることが出来ました。尤も改札口を抜ける時駅員がちらと顔…