片鬢、片眉毛

              
母方の祖母は万延元年一月生まれ。末っ子である母を気遣ってか四六時中家に来て、私にとっ

ては歴史上の出来事としか思えない様な話をいくつも語ってくれました。これもその内の一つ

です。

≪おばあちゃんの子供の頃はなー大雨で土手が崩れたりすると役人が、大勢の懲役人を連れて

直しにくるけん川向こうに使いに出されるのが一番恐ろしかった≫≪でも牢屋の外に連れ出し

て逃げたらどうするの≫≪懲役人は片鬢、片眉毛、と言ってな片方の鬢と眉毛を剃り落とされ

ているで逃げた処で囚人とひと目で判るけん誰ちゃ逃げん≫ あれから幾星霜。テレビの時代

劇をいくら見ても片鬢片眉毛の罪人など一度も見た事も聞いた事も有りません。ひよっとする

とこれは蜂須賀藩だけの決まり事だったのかもしれません。時代考証に詳しい方に一度聞いて

みたいと思っております。