新しき門出

   

此処の生活にもやっと馴染み始めた頃初めてのお盆が巡って来ました。台風11号の接近中でもあり殆ど部屋に篭りっきりの夕暮れ、食事に降りて行くと、いかもお盆らしい精進料理が設えてありました。神道の家に育った私には始めての経験です。返りがけにふと集会室を覗くと、美しい花々で飾られた綺麗な祭壇が設えられてあり、正面に、この施設で終焉を迎え、今年が初盆の方々の名前が掲げられてありました。
私も何れお仲間に入れて頂くことになる未だ顔も知らない先輩に心からのご冥福をお祈りしました。
陽が落ちて暗くなりかけた頃有志達が集まって迎え火が焚かれました。玄関正面の段差のある植え込みをを利用して、青々とした孟宗竹を斜めに切った中に蝋燭を点した竹灯篭が長短40本余り、折からの風にゆらめき、祭壇の正面では迎え火の苧柄が赤々と炎を上げ、「貴方のお家は此処よ」と、亡き人をいざなっているように見えます。
背景に流れるのは、お経ならぬ、<千の風になって> の物悲しい歌声。有難いお経や祝詞より、ぴったり心に寄り添って思わず涙が零れました。