新しき門出

ナップザックを肩にぶらぶらと慣例の散歩に出掛け宿舎の角を曲がると

施設長とスタッフが右往左往走り回っていました。私の姿を見掛けると

寄って来て何か話しかけとき携帯のベルが〜 「尋ね人ですか?」

「今見つかったそうなので」と、慌しく帰って行きました。

話題になった入居して未だ日も浅い80半ばの彼女、いつもロビーで

新聞や本をひっそりと読んでいる物静かな老婦人。物言いは丁寧だし、

気配りも行き届く。きっと両親の愛情たっぷりで育ち、優しい旦那様

と幸せな生涯を過ごしたのだと思います。でも今此処に私と一緒にいる

と言う事は〜? ひょっとして子供に恵まれなかった?唯一の欠点は

徘徊壁。きっとご主人との思い出の一杯詰まったお家に帰りたいので

しょう。でも心配しないで、スタッフも入居者も常に彼女の行動には

気を配っています。決して身元不明の徘徊者にはさせません。

入居者同士の相互扶助の心配りとスタッフの行き届いた介護これが私の

此処を終の棲家ときめた最大の理由です。