勇駒別林道の茸

        
若かりし頃、かに族を気取って大きなキスリングを肩に半月近く北海道をうろついたことがありました。山登りを始めたばかりで山の楽しさばかりで怖いことを知らず、登頂は無理でもせめて、名だたる山のトレッキングでもと一応の山仕度で出掛けました。なにせ半世紀近く年が流れているので何処から歩き始めたかもさだかではありませんが確か十勝岳を遠望してからという記憶があります。勇駒別林道に踏み入れて間もなく材木の伐り出しをしていた男の人達から「熊に気を付けろよ」と声が懸かりました。
それまでにも女一人と見てよくからかわれていたので、又かと「サンキュー」と軽く受け流して歩を進めました。なだらかな山道を二時間近く。最後まで通行人に逢いませんでしたが道の左右に如何にも食べられそうな茸が一杯生えています。ユースに着いたらお汁にでもしてもらおうと笹を手折って通し1メートルの笹2本分ぐらい収穫してルンルンで夕方その夜の泊まり場である白金温泉に着きました。女中さんに見せると「あら、これはナントカ茸<名前は忘れました>で美味しいのよ。こんな立派なの何処で採ったの」と聞かれ大威張りで場所を答えると「ああ、あそこに行けば良いのがあるのは解っているけど熊がこわくて余り行かない」ぎょっ!!注意は本当だったんだ。若しかすると私が熊のおかずにされたかも知れない茸汁を複雑な思いで味わって以降山の一人歩きは辞めて面白くも無い観光地巡りをする羽目に。
この稿を書くに当たって確認のため勇駒別林道を調べて見ましたが明確な答えが出ませんでした。もう廃道になったか、それとも立派な車道になったか?